映画に感謝を捧ぐ! 「容疑者(1944年版)」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はロバート・シオドマク監督の
「容疑者(1944年版)」に感謝を捧げようと思います。
容疑者 [DVD] - チャールズ・ロートン, エラ・レインズ, ロバート・シオドマク, チャールズ・ロートン
ジェームズ・ロナルドの同名小説をもとにして作られた本作は
「暇つぶし規模のサスペンス」という枠内で
芸術的手法を試みた挑戦作であります。
主人公の日常&妻の殺害に至るまでの経緯を丹念に描きつつ
殺害→証拠隠蔽に至る過程を抽象化する事によって
鑑賞者の想像力を刺激しつつ
舞台劇&推理小説的台詞&見せ方を追求した
ストーリー&演出、キャラクター造形は
私に、文学性と大衆食堂性の共存を図る手法と
穏健さと凶悪さを結ぶ絆の一形態を
目の当たりにする機会をもたらしました。
(知略と良心への信頼を融合させた解決法によって
後年の映画&TVドラマに影響を与えた
幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「庶民派+芸術派犯罪映画」の
一翼を担う作品であると言えるでしょう。
暴力的表現に依存しないスリル&サスペンス生成術によって
日常風景と犯罪を静かに絡み合わせ
鑑賞者を憎しみ&自己防衛本能と倫理観の間で揺れ動く主人公を
見守っていく状態へと導いた本作と
生きて映画を観ることのできる幸せに深い感謝を!!!。