映画に感謝を捧ぐ! 「侵入者(1962年版)」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回はロジャー・コーマン監督の「侵入者(1962年版)」に  感謝を捧げようと思います。  チャールズ・ボーモンドの同名小説を  もとにして作られた本作は  軽量映画と社会派の技によって  アメリカ南部に生きる白人たちの「封印された本音」をえぐり出し  「人種対立」という社会的禁忌に踏み入ることによって  不遇の生涯を遂げた過激作であると同時に  アメリカの未来を秘かに暗示した予言作であります。  予算・人員節減策の一つ「現地ロケ&現地人の起用」と  アメリカ南部の過渡期を通じて「独裁政権の樹立&テロリスト生成の過程」  「人種統合を阻む見えざる壁」  「人間が作った存在が人間のコントロールから離れていく恐怖」を  描ききったストーリーが融合する光景は  私に「暇つぶし映画と社会派的メッセージの共存」が  可能であることを示す生きた証と  中小映画会社の勇気と誇りに圧倒される機会をもたらしました。  (本作の舞台裏で繰り広げられた  「スタッフ・キャスト間の人種抗争&公開妨害の嵐」と  平穏でありながらも「万事解決のハッピー・エンド」とは言い難い幕切れが  アメリカ史の一端を象徴している点も見逃せません。)    まさに、軽量な映像の中に重厚なメッセージを宿す  恐るべき人間模様であると言えるでしょう。  1960年代の「倫理規定」の枠内に収まる映像で  浮世離れした「夢物語」を主流とするアメリカ映画界に  社会派の風を吹き込んだ作品の一つであると同時に  「B級映画の帝王」と称されたR・コーマンの裏の顔   「予算節減と商業的成功を果たしつつ、人種差別撤廃の一翼を担う」が  誕生するきっかけとなった本作と    生きて映画を見ることの出来る幸せに深い感謝を!!!。