映画に感謝を捧ぐ! 「エル・スール」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はビクトル・エリセ監督の「エル・スール」に
感謝を捧げようと思います。
アデライダ・ガルシア=モラレスの同名小説を
もとにして作られた本作は
穏やかなる妖気を感じさせる子供映画であります。
少女の目に映る「世界」を
純文学+日常劇的に描いていくストーリーと
日常風景を静かに写しながらも
「怪奇ムード」を放つ演出が融合することによって生じる
映画的科学反応は
私に「ホームドラマとサスペンスの空気が混ざり合う感覚」
「歴史が人間に与える影響」
「世代間の断絶を娯楽的に表現する技法の一形態」を
目の当たりにする機会をもたらしました。
(ヒロインが「父のルーツ」へと旅立つ瞬間に幕を閉じる事によって
ハッピー・エンドや悲劇とは異なる奥深さを感じさせる
幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「純文学系ホームドラマ」の静かなる強豪作であると
言えるでしょう。
「状況説明台詞を多用しつつ想像力をかき立てる」
「暴力&死を描写することなく内戦の間接被害を描く」
「娯楽的スリル&サスペンスに背を向けながら
人生のサスペンス性を写し出す」という
大胆にして詩的な試みに挑んだ本作と
生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。