映画に感謝を捧ぐ! 「蠅の王(1963年版)」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回はピーター・ブルック監督の「蠅の王(1963年版)」に  感謝を捧げようと思います。  ウィリアム・ゴールディングの同名小説をもとにして  1963年に作られた本作は  陽気と狂気が交錯する異色の子供映画であります。  無人島で暮らす少年達を通じて「子供特有の残虐性」  「野性と理性&理想と現実のせめぎ合い」  「閉鎖空間が人間に与える影響」を写し出したストーリー  サスペンス、青春映画、ホラーの技法が絡み合った演出  明るくも不気味な挿入歌が一体となる光景は  私に、状況説明的描写を抑制することによる  スリル&サスペンスの強化、白黒映像の娯楽的効能  空間的制約が生み出す精神的スケール感の増幅を    目の当たりにする機会をもたらしました。  (「ハッピー・エンド」特有の解放感よりも  不安&虚しさが優る幕切れとなっている点も見逃せません。)  まさに「陰鬱系冒険映画」の静かなる強豪作であると言えるでしょう。  無人島+少年という組み合わせを活用して  人間社会の暗部に迫る作劇法と  怪奇恐怖と冒険活劇性を兼ね備えた映像技によって  後年の冒険映画に対する「道しるべ」の一つとなった本作と  生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。