映画に感謝を捧ぐ! 「乗馬練習場」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はイヴ・アレグレ監督の「乗馬練習場」に
感謝を捧げようと思います。
交通事故に遭い、入院した女性「ドラ」と
夫「ロベール」の運命を描いた本作は
精神&技巧的葛藤に彩られた愛憎劇であります。
過酷でありながらも穏やかな
人情劇の世界を生きてきた男が
妻の秘密を知ることによって
愛憎&欲望渦巻く世界へと引きずり込まれる光景を
日常劇、恋愛劇、陰謀劇の手法を
使い分けながら描いていくストーリー&演出は
私に自分の信じていた世界が「偽り」であることを
思い知らされる恐怖と
ロマンス&ホームドラマとサスペンスを結ぶ絆の
一形態を目の当たりにする機会をもたらしました。
(「死」に勝る制裁を受けた悪女親子と
孤独の闇へと去っていく男の姿が
ハッピー・エンドとも悲劇とも異なる味わいを放つ
幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「世界崩壊系愛憎劇」の一翼を担う
作品であると言えるでしょう。
経済的に追いつめられながらも
愛を信じ続け、全てを失った男
愛と欲心の間で揺れ動く悪妻
欲望に支配され、娘を「悪女」へと導く姑が
「知らぬが仏」という諺のフランス的解釈を写し出す本作と
生きて映画を観ることのできる幸せに深い感謝を!!!。