映画に感謝を捧ぐ! 「卒業(1967年版)」
映画感謝人GHMです。
今回はマイク・ニコルズ監督の「卒業(1967年版)」に
感謝を捧げようと思います。
チャールズ・ウェッブの同名小説をもとにして作られた本作は
60年代のアメリカ社会を覆う「いらだちと不安」を体現した作品であります。
MTV的表現法と絵画的表現法を駆使しながら
重厚さと現実感を保ち続ける映像表現
(台詞による説明を抑制し「絵で語る」事によって
想像力を刺激する作りとなっている点も印象的です。)
恋愛映画の王道要素を利用して「アメリカ映画」の禁忌と
アメリカ流上流社会の内幕をえぐり出したストーリー
(同時に「精神をないがしろにして物質的繁栄を追求する社会」の行き着く先を
暗示しているような印象を受けました。)
スター的存在感よりも「作中人物の内面に迫る」ことを重視したキャスティング
情緒と苦味を兼ね備えた挿入曲が融合して
アメリカ映画の「幻想的な華やかさ」に抗う青春映画が生成させていく光景は
私に「アメリカ映画史における反抗期」特有のエネルギーと
浮世の垢を目の当たりにする恐怖を体感する時間をもたらしました。
(主人公の行動を安易に美化しない作りとなっている点や
映画史上まれに見る「寒々しいハッピー・エンド」で幕を閉じている点も見逃せません。)
まさに「一青年の通過儀礼」を通じて「アメリカ映画の通過儀礼」を示した
作品であると言えるでしょう。
1960年代後半のアメリカを蝕む「病理」が
現代社会においても健在であることを認識させられる本作と
生きて映画を見ることの出来る幸せに深い感謝を!!!。