映画に感謝を捧ぐ! 「セイブ・ザ・タイガー」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はジョン・G・アビルドセン監督の「セイブ・ザ・タイガー」に
感謝を捧げようと思います。
LAで服飾メーカーを営む男「ハリー・ストーナー」の
運命を描いた本作は
後年の「ファーゴ」などに通じる道を感じさせる不人情劇であります。
1970年代的陰鬱さ&現実感に溢れた映像
過去に心を支配され
張りぼての楽園と自らを取り巻く人々への愛ゆえに
「罪人への扉」を開いてしまった男を通じて
「アメリカン・ドリーム」が腐敗し、崩れ落ちた後の米国の現実と
冷徹にえぐり出したストーリー
場違いなまでに上品な音楽が一体となる事によって生じる
映画的化学反応は
私に暴力&残酷描写をほとんど用いることなく描かれた「死者の世界」を
目の当たりにする機会をもたらしました。
(主演男優J・レモン氏の悲喜混ざり合う名演と
「時代に取り残された人間の苦渋」を不気味なまでの和やかさで表現した
反娯楽的幕切れが
作品の苦味を高めている点も見逃せません。)
まさに「陰性日常劇」界の静かなる強豪作であると言えるでしょう。
同監督の1976年監督作「ロッキー」とは無関係の物語でありながら
両作品をつなぐ「運命の糸」を感じさせる本作と
生きて映画を見ることの出来る幸せに深い感謝を!!!。