映画に感謝を捧ぐ! 「しとやかな獣」
映画弁護人GHM(西村哲也))です。
今回は川島雄三監督の「しとやかな獣」に
感謝を捧げようと思います。
公団住宅に住む4人家族と
彼らを取り巻く人々の運命を描いた本作は
過激な題材を和やかに描いた家族劇であります。
主人公一家の部屋とその周辺のみに徹した舞台的映像
古典芸能の香り漂う音楽
犯罪サスペンスとホームドラマが混ざり合ったかのような
ストーリー&キャラクターが一体化することによって生じる映画的化学反応は
私に「知的且つ庶民的な悪漢の宴」と
「陰謀渦巻く世界」を暴力&性描写に依存することなく描ききる妙技を
目の当たりにする世界をもたらしました。
(「残酷な状況を巧みに抽象化する」手法が効果的に使われている点と
台詞ではなく表情&音によって「悲劇の香り」を感じさせる幕切れによって
「文学」の香りを感じさせる作品となっている点も見逃せません。)
まさに「空間限定型不人情喜劇」の雄と呼ぶにふさわしい作品であると言えるでしょう。
欲得ずくでありながらも憎めない人々の「化かし合い」が
人間社会の暗部を穏やかにえぐり出す本作と
生きて映画を見ることの出来る幸せに深い感謝を!!!。