映画に感謝を捧ぐ! 「泳ぐひと」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回はフランク・ペリーシドニー・ポラック監督の「泳ぐひと」に  感謝を捧げようと思います。 ジョン・チーヴァーの同名小説をもとにして作られた本作は  世界の光と闇を戦術的にえぐり出す過激作であります。  「強いアメリカ」を象徴する記号  「プールつきの豪邸・強靱な肉体・成功者たち」によって  繁栄に潜む「裏の顔」を暴いていくストーリー  スポーツ映画とサスペンスの技法を融合させた演出  場違いなまでに品のある音楽が一体となる光景は  私に、破壊や殺戮とは異なる「痛み&恐怖」と  ユーモアと美によって「内なる非情さ」を鮮明化する妙技を  目の当たりにする機会をもたらしました。  (ホラー映画とは異なる形態の「怪奇恐怖」と  静かなる空しさに支配された幕切れが  「死」に勝る悲劇性を醸し出している点も見逃せません。)  まさに「陰性スポーツ映画式道中劇」と呼びたくなる  作品であると言えるでしょう。  プールを泳ぐことによって「現実」というゴールから逃げ続ける主人公の姿が  浮世離れした娯楽作品が駆逐され「社会の闇」に向き合う作品が台頭していく  1960年代後期のアメリカ映画界を体現する本作と  生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。