映画に感謝を捧ぐ! 「長屋紳士録」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回は小津安二郎監督の「長屋紳士録」に
感謝を捧げようと思います。
迷子になった少年の世話を押しつけられた
女性の運命を描いた本作は
松竹喜劇の技と歴史書の重みが共存する
日常系映画であります。
人情と不人情のバランス感覚
説明台詞に依存せず、映像で語る文学性
娯楽映画的盛り上げを抑制するクールさによって
第2次大戦が日本に与えた「傷」に対する鋭い目線を兼ね備えた
ストーリー・演出・俳優&女優陣が
王道的な設定に説得力&生活感を与えていく光景は
私に「人情劇と社会派の平和的共存」の一形態と
「大人と子供の関係」に対する一考察を目の当たりにする機会をもたらしました。
(甘いハッピー・エンドと見せかけて「社会の闇」をえぐり出す
幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「人情劇風社会論」の一翼を担う作品であると言えるでしょう。
舞台劇&映画の技法・落語の味わいが程よく混ざり合いながら
「第2次世界大戦後」の日本に花咲く冷たさと希望を写し出す本作と
生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。