映画に感謝を捧ぐ! 「濡れた二人」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回は増村保造監督の「濡れた二人」に  感謝を捧げようと思います。  笹沢佐保の小説「喪失の女」をもとにして作られた本作は  サスペンス・エロティシズム・怪奇恐怖が交錯する  恐るべき愛憎劇であります。  「一人の異分子によって組織の人間関係が崩壊する」構図と  男性の精神的弱さ&女性の悪魔的魅力を  恋愛劇&ウィルス系ホラーに表現したストーリー  ポルノ的過激さと上品さが交錯する性描写  素朴な自然美・怪しげな音楽  「和製悪女の雄」若尾文子の五体を駆使した怪演が一体となる光景は  私に「恋愛劇とホラー映画の秘めたる類似点」と  文化的対決映画のスリルを目の当たりにする機会をもたらしました。  (後年の「仁義なき戦い 広島死闘編」の序曲を感じさせる  北大路欣也の熱演ぶりと  「万事解決のハッピー・エンドにしない」倫理意識と  西部劇の香りが混ざり合った幕切れとなっている点も見逃せません。)  まさに「モンスター映画式恋愛模様」の静かなる強豪作であると言えるでしょう。  背徳的快感と倫理の間を  綱渡りのように歩きながら  人間関係の誕生と崩壊を描くことに挑んだ本作と  生きて映画を見ることの出来る幸せに深い感謝を!!!。