映画に感謝を捧ぐ! 「浮き雲(1996年版)」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はアキ・カウリスマキ監督の「浮き雲(1996年版)」に
感謝を捧げようと思います。
リストラによって職を失った夫婦と
彼らを取り巻く人々の運命を描いた本作は
穏やかさの中に「強さ」を感じさせる人情劇であります。
ジェットコースター的に繰り出される「不幸」に翻弄されながら
再起を図ろうとする人々の物語を
娯楽的盛り上げを抑制したクールな映像
俳優・女優陣の穏やかなる熱演
陽気な音楽を融合させながら描くという試みは
私に、状況説明的な台詞に依存せず
自然な形で「登場人物の思い&状況」を伝える妙技と
他者への憎しみ・責任転嫁・同情狙いに溺れず
日常の中で積み上げられた「技量」によって
残酷な運命に立ち向かう人々の輝きに
触れる機会をもたらしました。
(娯楽的ハッピー・エンドでありながら
感動誘発やご都合主義の匂いをほとんど感じさせない
自然な幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「穏健派人生訓」の雄と呼ぶにふさわしい
作品であると言えるでしょう。
A・カウリスマキ監督作特有の
「言葉以上のメッセージを放つ映像&音楽」と
社会に対するクールな目線と
ユーモア精神のバランス感覚を保ちながら
「希望」を描こうとするストーリーが
純度の高い感動と希望を呼び起こす本作と
生きて映画を見ることの出来る幸せに深い感謝を!!!。