映画に感謝を捧ぐ! 「マッチ工場の少女」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はアキ・カウリスマキ監督の
「マッチ工場の少女」に感謝を捧げようと思います。
マッチ工場で働く少女「イリス」と
彼女を取り巻く人々の運命を描いた本作は
怪奇恐怖と日常劇が静かにせめぎ合う作品であります。
陰鬱でありながらも平穏な日常から
静かな足取りで猟奇的な方向へと進んでいくストーリー
映像技を極限まで抑制することによって
感情移入&同情を拒み続ける演出
不気味なまでに寡黙&無表情な俳優・女優陣
美しい挿入歌を意地悪な形で活用する手法が
一体となる光景は
私に「日常と犯罪の関係」に対する一考察
登場人物の「内面」を台詞で説明しないことによって
想像力を鍛える妙技
「淡々とした語り口」によって実録的ムードが生成される現象を
目の当たりにする機会をもたらしました。
(「壮絶なるアンチ・クライマックス」と呼びたくなるような幕切れが
ハッピー・エンドも悲劇も人生の一部でしかない」ことを
象徴している点も見逃せません。)
まさに「陰性日常劇」の雄にして
「穏健派犯罪劇」の強豪作であると言えるでしょう。
残酷でありながらも穏やかな愛憎劇の中で
ホラー映画とは異なる怪奇恐怖と
苦味の利いたリアリティが共存する姿に驚かされる本作と
生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。