映画に感謝を捧ぐ! 「午後の曳航」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回はルイス・ジョン・カリーノ監督の「午後の曳航」に  感謝を捧げようと思います。  三島由紀夫の同名小説をもとにして  1976年に作られた本作は  激しくもクールな陰性ホームドラマであります。  平穏な日常の裏で繰り広げられる  愛と憎しみ、純真さと残酷さ、理想郷と現実のせめぎ合いを  心の声を多用しつつ「状況説明台詞」を避け  映像で語ることを重視する作劇法と  濃厚な残酷描写&性描写を用いながらも  見世物的派手さに依存せず  上品さ保ち続けるを演出法を駆使して描くという試みは  私に、悪意なき狂気と精神的断絶がもたらす惨劇と  文学性と俗物性をバランス良く配合した  ストーリー&映像の醍醐味を目の当たりにする機会をもたらしました。  (流血や暴力を排除しているにもかかわらず  ホラー映画以上の死臭と恐怖を感じさせる幕切れを    生み出した作品であるという点も見逃せません。)  まさに「陰鬱系子供映画」史上屈指の  静かなる残虐性に溢れた作品であると言えるでしょう。  穏やかな外見の中に「大人への憎悪」を宿す少年達と  奔放に交わりながらも「安らぎ」を求める大人達の姿が  怪奇映画とは異なる「怪奇恐怖」と  苦い現実感を感じさせる本作と  生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。