映画に感謝を捧ぐ! 「獣人」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はジャン・ルノワール監督の「獣人」に
感謝を捧げようと思います。
エミール・ゾラの同名小説をもとにして作られた本作は
技巧的な妖気に包まれた愛憎劇であります。
愛故に「狂気」の虜となった男女の運命を
恋愛悲劇と異常心理劇を豪快に融合させたストーリー
暴力的&性的な場面を巧みに曖昧化させ
鑑賞者の想像力をかき立てる演出
探偵小説の香り漂うキャラクター造形によって
写し出していくという試みは
私に「人間の動物性」・「環境&犯罪が人間に与える影響」の一端を
娯楽的に表現しつつ
倫理的制約と見世物性、大衆性と文学性を共存させる手法と
映像的魅力がストーリーを補強し、突っ込み所を覆い隠していく現象の
一形態を目の当たりにする機会をもたらしました。
(破滅的でありながらも「ハッピー・エンド的解放感」を感じさせる
味わい深い幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「異常心理系恋愛悲劇」の静かなる強豪作であると言えるでしょう。
J・ルノワール監督&J・ギャバンの名コンビが醸し出す渋味
暴力的愛情と純文学的狂気の融合による科学反応
白黒映像の特性、スター主義的ロマンに彩られた本作と
生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。