映画に感謝を捧ぐ! 「ハネムーン・キラーズ」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はレナード・カッスル監督の「ハネムーン・キラーズ」に
感謝を捧げようと思います。
犯罪者カップル「マーサ・ベック&レイモンド・フェルナンデス」の
生涯をもとにして1970年に作られた本作は
男女の精神的相違点&愛と狂気の近似性
現代社会の病理、娯楽映画人の宿命に対する一考察が
静かに交錯する実話系犯罪映画であります。
「狡猾な結婚詐欺師+彼に翻弄される純情なヒロイン」という構図が
「純情にして凶暴なるヒロイン+彼女によってペースを乱されていく結婚詐欺師」へと
変化していく過程を
サスペンスとロマンスをクール且つ残酷に絡み合わせる作劇法
猟奇的見世物感&生活感に溢れた映像技
庶民的ムード漂う俳優&女優陣を融合させながら描いていくという試みは
私に「残虐性と悲劇性、純愛と欲望のせめぎ合い」と
「美男美女を廃したキャスティング&映画的装飾に背を向けた風景の効能」の
一形態を目の当たりにする機会をもたらしました。
(犯罪カップルの破滅を描きつつ
道徳性よりも純愛映画的ハッピー・エンドの香りが濃厚な
幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「実話系純愛犯罪映画」界の冷徹なる怪作であると言えるでしょう。
女性の秘めたる野性&男性の狡さ+繊細さ
ヨーロッパ映画的渋味と軽量映画的俗物性が融合した
ストーリー&演出の醍醐味
「人の不幸を娯楽化する」エンターテイナーの宿命が一堂に会し
後年の実話系犯罪映画に対する「道しるべ」の一つとなった本作と
生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。