映画に感謝を捧ぐ! 「稲妻(1952年版)」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回は成瀬巳喜男監督の「稲妻(1952年版)」に感謝を捧げようと思います。  林芙美子の同名小説をもとにして作られた本作は  文学性と資料性が静かに交錯する女系日常劇であります。  ホームドラマの形態を取りながら  昭和20年代の庶民事情と  女性の光と闇を静かに描いていくストーリー&演出が  軽妙+賑やか且つ上品に進行していく光景は  私に「穏やかさの中に危うさを孕んだ日常風景」と  「スター性と物語性、文学性と大衆性の平和的共存」の  一形態を目の当たりにする機会をもたらしました。  (万事解決のハッピー・エンドに逃避せず  「家族再生」へのささやかな希望を照らし出す  優しくも節度のある幕切れとなっている点も見逃せません。)  まさに「陰鬱系日本女性論」の一翼を担う作品であると言えるでしょう。  生真面目なヒロインと  俗物的でありながらも愛嬌のある人々が織りなす人間模様によって  人生のドラマ性、太平洋戦争が日本に与えた精神的ダメージ  純文学と娯楽の融合がもたらす科学反応を写し出す本作と  生きて映画を観ることのできる幸せに深い感謝を!!!。