映画に感謝を捧ぐ! 「恐怖の足跡 ビギニング」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回はジョン・パーカー監督の「恐怖の足跡 ビギニング」に  感謝を捧げようと思います。  狂気に取り憑かれ、夜の町を彷徨う女性の  運命を描いた本作は  見世物的且つクールな恐怖に彩られた怪作であります。  「語り部」以外の台詞を排除する事によって  状況設明を極限まで抑制し  サスペンス+ホラー的映像表現によって  呪われた環境と過去の罪が生んだ「悪魔」によって  崩壊していくヒロインを写し出していくという試みは  私に「映画的手法で恐怖の源に迫っていく」実験と  純文学性と大衆娯楽性の共同戦線を  目の当たりにする機会をもたらしました。  (1961年の映画「恐怖の足跡」が持つ  「秘めたる教材性」に便乗した邦題と  現実と悪夢の境界線を曖昧化することによって  真実と記憶の関連性に迫る幕切れとなっている点も見逃せません。)  まさに「軽量級映像派恐怖論」の一翼を担う作品であると言えるでしょう。  猟奇的且つ幻惑的な映像、台詞なき人間模様  奇襲的に「ヒロインの過去」を暴露しつつ  要所は曖昧化する手法によって  後年のサスペンス&ホラーに対する「道しるべ」の一つとなった本作と  生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を。