映画に感謝を捧ぐ! 「牝犬」 (1931年版)
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はジャン・ルノワール監督の「牝犬(1931年版)」に
感謝を捧げようと思います。
メリヤス会社の会計係「モーリス・ルグラン」と
彼を取り巻く人々の運命を描いた本作は
上品な毒気に彩られた愛憎劇であります。
芸術的才能を持ちながらも
悪妻と仲間たちの侮辱にさらされ
不遇の人生を送る男
愛のために悪女となってしまった女
欲望のために恋人を操る男が織りなす
華麗にして危険な交流を
過激且つ上品に描いていくストーリー&演出は
私に「善人が悪漢との出会いによって悪に染まっていく」現象と
「人生の方向性を誤った人間の悲劇」を
映画的に表現する手法の一形態を
目の当たりにする機会をもたらしました。
(運命のいたずらによって再開を果たした男2人が
恩讐を超えた絆で結ばれ
過酷な人生を陽気に歩いていく姿に
心打たれる幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「フランス流不倫劇」の雄と呼ぶにふさわしい
作品であると言えるでしょう。
平穏且つ憂鬱な日常から
甘いロマンス&芸術家的人生へと転じた後
愛憎サスペンスを経てコメディへと着地していく主人公の人生が
静かなる恐怖、ブラック・ユーモア的な笑い
渋味の利いた感動を呼び起こす本作と
生きて映画を観ることのできる幸せに深い感謝を!!!。