映画に感謝を捧ぐ! 「悪の力」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。  今回はエイブラハム・ポロンスキー監督の「悪の力」に  感謝を捧げようと思います。  アイラ・ウルファートの小説「タッカー一味」を  もとにして作られた本作は  軽快でありながらも渋味の利いた極道映画であります。  アメリカ流極道社会に生きる男たちの栄光&破滅を  冷酷さと人情味の均整を保ちながら描いていくストーリーと  技巧的表現を抑制し、生真面目且つ効率的に進行する演出が  一体となる光景は  私に家族愛と野望、計略と暴力、秩序とアウトロー  娯楽性と文学性のせめぎ合いと  教訓的&社会派的メッセージを  効率的に写し出していく技法の一形態を  目の当たりにする機会をもたらしました。  (悲劇性と救済、死臭と誕生の香りが静かに交錯する  幕切れとなっている点も見逃せません。)  まさに「心理派極道映画」の雄と呼ぶにふさわしい  作品であると言えるでしょう。  暴力描写を抑制し、人間模様&頭脳戦を重視することによって  生成される「静かなるスリル&サスペンス」と  善悪の二元論に捕らわれないキャラクター造形によって  後年の極道映画に対する「道しるべ」の一つとなった本作と  生きて映画を観ることのできる幸せに深い感謝を!!!。