映画に感謝を捧ぐ! 「桜桃の味」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。

 今回はアッバス・キアロスタミ監督の「桜桃の味」に

 感謝を捧げようと思います。

桜桃の味 ニューマスター版 [DVD]
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 車で各所を回り、出会った人々に仕事を依頼する男

 「バディ」の運命を描いた本作は

 静かなる文学性&死臭に彩られた道中劇であります。

 死に向かうための「協力者」を探し求める男の旅を

 淡々と写し出していくストーリー&演出が

 人情劇と怪奇劇が融合したかのような気配を放つ光景は

 私に「物理的スケール感」を抑制することによって

 精神的スケール感が高まっていく現象と

 「非暴力的狂気」の一形態を

 目の当たりにする機会をもたらしました。

 (一筋の「希望」を残しつつ、能天気なハッピー・エンドにはしない幕切れと

 現実と物語の境界線を意図的に示すかのような「後日談」も見逃せません。)

 まさに「道中系死生論」の一翼を担う作品であると言えるでしょう。

 旅先で遭遇した人々との交流を通じて

 「旅」が本来の目的から静かに離れていく姿を通じて

 人生の神秘性、死の麻薬性、映画の持つ文学的可能性を

 世に示した本作と

 生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。