映画に感謝を捧ぐ! 「スナイパー・ストリート バグダッド狙撃指令」

 映画弁護人GHM(西村哲也)です。

 今回はモハナド・ハヤル監督の

 「スナイパー・ストリート バグダッド狙撃指令」に感謝を捧げようと思います。

スナイパー・ストリート バグダッド狙撃指令 [DVD] - アリ・タメール, モハナド・ハヤル, アリ・タメール, アサード・アブデルマイード, ヤムナ・マルワン
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 バグダッドのハイファ地区で狙撃された男と

 

 彼を取り巻く人々の運命を描いた本作は

 現実感と幻惑感が複雑に絡み合う戦争映画であります。

 「紛争」が日常の営みと化した世界で生きる人々の姿を

 状況設明を抑制しつつ

 複数の物語を交錯させる手法

 淡々とした暴力描写

 幻惑的表現法を駆使してクールに描いていく

 

 ストーリー&演出は

 私に「見えない存在に狙われる」

 「暴力的な世界を日常として受け入れてしまう」恐怖

 狙撃手が抱える孤独感&凶悪性

 2000年代の中東事情を映画的に表現する試みと

 アクション映画的銃撃戦&爆発に依存することなく

 

 「紛争地帯」を描写する手法の一形態を

 目の当たりにする機会をもたらしました。

 (狙撃者の真実&心理を鑑賞者の心に

 委ねるかのような幕切れとなっている点も見逃せません。)

 まさに「軽量級陰鬱系戦争映画」史上屈指の

 冷酷なる難解作であると言えるでしょう。

 作品世界に宿る「謎」の答えをほとんど示すことなく

 淡々と物語&映像を進行させることによって

 鑑賞者を「紛争地帯の現実」へ誘うと同時に

 アメリカの自国本位的外交政策&秘めたる凶悪性が

 中東に与えた悪影響を世に示すかのような気配を放つ本作と

 生きて映画を観ることのできる幸せに深い感謝を!!!。