映画に感謝を捧ぐ! 「黒い河(1944年版)」
映画弁護人GHM(西村哲也)です。
今回はアンドレ・ド・トス監督の
「黒い河(1944年版)」に感謝を捧げようと思います。
両親を失い、親戚の家で暮らすことになった女性
「レズリー・カルヴィン」と彼女を取り巻く人々の
運命を描いた本作は
推理小説と人情劇の持ち味が絡み合う
館系サスペンスであります。
新天地での生活によって
過去の傷を乗り越えようとするヒロインの苦闘を
日常風景と謎解きを絡み合わせながら描いていくストーリー
サスペンス技法を駆使して段階的に恐怖を高めていく演出
家族劇&日常劇と犯罪劇を融合させたかのような
キャラクター造形が一体となる光景は
私に「戦争がもたらす悲劇&謎めいたに心身を蝕まれる」
「穏やかな日常が崩壊していく」恐怖を映画的に表現する手法と
見世物的残酷描写&暴力描写に依存しない
スリル&サスペンス生成術の一形態を
目の当たりにする機会をもたらしました。
(勧善懲悪よりも「心の傷」を乗り越えたヒロインの旅立ちに
重きを置いた決着→幕切れとなっている点も見逃せません。)
まさに「空間限定型巻き込まれ+癒し系映画入門」の
一翼を担う作品であると言えるでしょう。
「スリル&サスペンスの緩慢化を抑制しながら
ロマンス&癒し要素を挿入する」
「巻き込まれサスペンスの王道要素を的確に押さえる」堅実さと
戦争がもたらす精神的ダメージ、閉鎖的環境特有の人間心理を
精神医療の難しさを題材とする生真面目さを兼ね備えた本作と
生きて映画を見ることのできる幸せに深い感謝を!!!。